春名芙蓉の子育て支援

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―親が成長することが大切


◆ゆとりを持って洋々とした心で子育て
 あなたは専業主婦とおっしゃっていますから、忙しいとはいっても、職業を持っておられる方より、それだけの時間は十分にあるはずですね。だから、自分の気持ちで「忙しい、忙しい」と思い込んではいけません。これからは、ゆったりとした気持ちで、エネルギーを欠乏させないよう気をつけて過ごしてください。元気で、大きく、洋々とした気持ちで子どもさんを育ててあげてほしいですね。本を読んであげたり、歌を歌ってあげたり、「ゆとりを持つことが仕事だ」と思ってあげてください。
 子供に手がかかるというのは、今の時期だけです。大きくなったら自分で歩いていきます。親のそばに寄ってきてくれない時期がきっときます。だから、今が、大事です。大事に、愛しく思ってあげてください。(幼児を育てておられる方に)



◆自我のない親になれ
 きつく言うのは、自分の感情が混じっています。そこには、親の欲があります。自我があります。それを子どもにぶつけたら、せっかくの子どもを台無しにしてしまいます。ぐれさせたり、やけを起こさせたりして、子どもをだめにしてしまいます。
 子どもの心の中で、いつも親の言葉が回るんですよ。「またこう言われるだろう」、「またこうされるだろう」と思ったら、そこで賢く、ずるくなって、親の前だけ要領よくする子になっていきます。親が厳しい子どもって、家ではおとなしそうでも外で悪いことをしている場合があります。私もそんな子を知っています。親の前では、お行儀も、言葉遣いもすごくよかったんですが、外ですごく悪かった。でも、親はそんなことは知らない。その様子を見て、私もよくわかりました。
 だから、家で十分に満足させてあげる、十分にエネルギーを与えてあげる。そうすると、外ではけ口を作らない。家の中で暴れるのはいいんですよ。子どもは親のそばで安心して暴れてくれる。でも、危なくないように自然から守ってもらえるような意識に、私自身がなろうと思いながら育てたんですけれど。



◆もし子供が、と想像してみてください
 子育ての真っ最中の若い方は先が見えないものがおありだろうから、そういうものを話し合って、修正することがあれば修正していただければ、とてもいい人生を皆さんが送れるようになってくださるだろうと思っています。
 子育てと同じような気持ちで、みなさんと触れ合っているんです。だから、今あなたがおっしゃった「次の子をどうしたらいいんだろう」じゃなくて、まず自分というものの修正を大切にしてください。まだお若いから、どんどん修正できると思うんです。
 心を込めて自分を見つめる。子どもが元気なことが当たり前になっているんじゃないか。そういう子どもでも、もし、いなくなったらどうしよう。病気だったらどうだろう、と想像してみてください。誰もが、全て与えられているものに対して感謝がないと思うんですね。だから、今与えられている間に感謝することです。消えてしまうこともあるんです。突然、交通事故で亡くなったり、世の中には言うに言えない無残なことが起こっているんだから、「今、困ったことが何もない、平穏な生活がある」ということを大切にして、喜んでいかないと、失ってしまってからでは遅いですからね。ですから、それをしみじみと喜ばれたらいかがですか。それは、若い方だけではなくて、歳をとっておられる方も同じなんです。



◆親がどういう風に育っていくか
 私がみなさんにお話ししたいのは、「子どもをどういう風に育てるかではなくて、親がどういう風に育っていくか」ということなんですね。「下の子はよくしゃべるのに、上の子はしゃべらない」とか、そういうところを気にするというのが親の心でね。親がもっと大きな気持ちでどっしりと腰を据えて、子どもを包み込んであげられるような気持ちでいた時には、全てが良い方に変わっていくと思います。自分が狭い世界を作っていると、そういうものしか寄ってこない。小さな心の枠を外して、ドンと構えた時に、まるで違った様子に変わってくることはいっぱいあります。
 みなさんね、いろんな性格のお子さんがおられるでしょうが、大事に育ててあげたら、成長した時に出てくるものはお母さん方の想像できないものがあると思いますよ。



◆親が正しく生きようとした時に、それが必ず子どもにも伝わる
 小さな頃に、子どもの心にインプットされたものは消えないなと思います。私自身もそうでした。だから、子どもの頃にいいものを、いい思い出を刻んであげたい、子どもにひがませるようなことはさせない。抱いたり、おぶったり、手をつないだり、小さな頃はいつも子どもの体が私の一部にくっついて行動していた。本当に子どもっていうのは、おろそかにしてはいけないなあと思うのね。私の子がこうして今になって、「お母さんにこうしてもらった」と思い出してくれるように、幼い頃に焼きついたものは絶対に心から消えませんので、真心から、思いを込めて、その思いを子どもにインプットできる親の心が必要だと思います。一言何かを教えるのにも、笑顔で言ってあげる。何か注意をしないといけない時には手を持って「こうなのよ」と言ってあげる。そんな心がつながっているものが大切じゃないかなあ。転んだ子どもが立ち上がるのを待つ親の心、温かい心で、笑いながらじっと待ってあげる心
、親がそういう心であれば、子どももそんな大らかな心になると思うの。親が正しく生きようとした時に、それが必ず子どもにも伝わるということですね。



◆子どもを見て反省することがいっぱいある
 私は子育てをする時に、どんなに親の心が大切かをお話ししたいので、「二人目を生んだほうがいいか」の相談にはお答えできないと思います。
 ただ、今の子どもさんがわがままで怒ってばかりしているというのは、あなたがお子さんを六歳まで育てる間にそうさせたものがあるんですよ。決して子どものせいにしないで、「自分のどこが間違っていたんだろう」と子どもを見て反省することがいっぱいあると思います。
 私も三人の子を育てながら反省ばかりしてきました。それは、「これでいいのか」と悩むというのではなくて、常に、子育てをきっかけに自分を反省し、そこから意識を高めてきたのです。そんな時代を通り過ぎて、今は、子どもたちが孫を育てるのに、「こうあって欲しいという親の希望、親の願いをあんまりかけないほうがいいよ」と言うんです。親は誰でも、子どもが無事に成長して、いい子でいて欲しいと願います。それは当然のことだけど、そういう願い方をするより、「自分自身がいい親であるかどうか」を見つめるほうがいいんじゃないかと思います。子どもは親しだいでいろんな色に変わることができるものを持っているんです。子どもって、変えることができるんです。
 でも、子どもを変えるというより、自分を変えることが大事ですね。やっぱりそれには、ゆとりがいるんですね。



◆いつかは消えていくことに気をとらわれているより
 何かがあってもそれは今だけのことで、いずれは消えていきます。子どもを見て、「あれができたら、これができたら」と私も思ったことがありましたが、幼稚園でできなかったことでも小学生になったら当たり前にできるようになりました。いつかは消えていくことに気をとらわれているより、元気でいてくれる子どもがあることがありがたいという感謝から、次に出てくる喜びをふくらませて子どもと接していた方が、よほど楽しい家庭になっていくでしょう。
 みなさんも、今からプラスになることはどんどん取り入れて、これから先、より大きな幸せをつかんでいただければありがたいと思います。今、喜びの意識をいただくことによって、十年後が違ってきます。みなさんの生き方、意識のあり方がよりよく変わっていくことを願っています。