No.29
経済的なゆとりはなくても、家族とともに暮らせていることを感謝できる時間をいただいたなら

平成17年11月17日

みなさん、こんにちは。春名芙蓉です。
朝晩、肌寒くなってきましたが、お元気ですか?
大地が、どんどん冬支度を進めています。
窓から眺める山々や空の色が、私の心に何ともいえない落ち着きを与えてくれて、「ああ、幸せだなあ」と、今生きている喜びを実感しております。
そんな中で、ふと洋裁の手を止めて、一生懸命に頑張っているさまざまな方々のことを思うと、「今の自分の喜びを、分かち与えて差し上げたいなあ」と強く感じます。「意識のチャンネルを一つ変えることで、もっともっと幸せになれることをお伝えしたいなあ」と思います。

先日、男性の方々を中心とした集いの中でお話しする機会がありましたが、こんなことをおっしゃった方がおられました。
「私は十数年勤めていた会社を辞めて、求職中なんです。次の仕事を探しているのですが、まだ決まらずに、不安や焦る気持ちがあります。経済的にはゆとりがないんですが、ただひとつ良かったのは、今までにできなかったことですが、家族4人で夕食を食べられるようになったことです。今までは遅く帰ってきて、いつも一人で食べていましたが、今は妻と交代で夕食を作り、決まった時間に子供たちも交えて食事ができる。結婚して今年で10年、こんなことは初めてです。経済的に先は見えないんですが、それだけは良かったなと思います」

私はその方に、こう申し上げました。
「それは素晴らしいですね。仕事がないということを除けば、今が、人生の中で一番幸せですね。経済的なゆとりがなくても、家族と共に暮らせていることを、やっと感謝できる時間をいただいたということですから、これは本当にありがたいことですよ。」

誰にでも、人生の中で、立ち止まらないといけないことがあると思います。そんな時、戸惑ったり、焦ったり、不安になったりするものですが、その期間は、今までの自分を見つめ、これからの自分を想い浮かべる大切な「時」です。そんな時こそ、満たされていないものに不安を感じるより、今までも、そして今もいかに多くの幸せに満たされているかに気が付けば、そんな人生の道具が、本当の意味を持つものに変ります。

その男性にとっては、「今までがいかに幸せだったか」と、心の底から気付く時間でもあります。経済的には先が見えなくても、それまで遮二無二走り続けているときには見えなかった大切なものが見えてくるのです。例えば、伴侶のいることが、子供たちが元気な笑顔を見せてくれることが、自分自身も今日まで生かされてきたことが見えてくる。そうすれば、それらがどれほどありがたいことであったかを発見し、喜び、感謝する心が芽生えてきます。その心の芽生えが、その方のこれから先の人生にとって、いかに大切なことか。もちろん、今までにも喜んでおられたかもしれません。でも、今までの次元でなくて、もっと高い次元で、あらためて喜び、感謝する気持ちを持つということが、心の段階を上げていただけるものなのです。そして、心の段階が上がると、自然から、次に素晴らしい何かを与えられるのです。

「自分自身を振り返ることもなく、働くのみで生きてきた」という方が、今はちょっとストップさせていただいている。けれど、わびしいかといえばそうではなかった。家族に囲まれて幸せだ。「仕事がなければ食べてはいけない」という現実があるかもしれないけれど、次のことを心配するより、まず今与えていただいていることを喜ぶことが、次への道を開いてくれます。もし十のうち九つは満たされていなくても、一つの大きな幸せをいただいている。そのいただいているものを最高に喜び、感謝できたら、満たされていないと思われたことも満たされてきます。あまりにも感謝がなく突っ走ってきた人生だから、ストップさせられたことは、自然から与えられた愛の印だと思えばいいですね。

私のひとことをお読みのみなさんも、何か試練があり、気になることがあるかもしれませんが、「気にする」ということは、マイナスです。気にしていると余計に悪いものが集まって、一つの喜べることも消えてしまうかもしれません。ですから、自然から与えられた試練とは、それによって喜びに目覚めることで、意識を高めてやろうとの愛のしずくだと思ってください。これをきっかけに、心が育つことの大切さを知ったら、自然の働きが必ず寄ってきます。どんな問題も一つずつ解決していくのです。そして、解決していくたびに、そこにまた喜びを見出してゆけるようになります。喜べば喜ぶほど、喜びが寄ってくる。これが摂理ですね。

その男性は、「今まで感謝なんてしたことがなかったなあ」と反省されていました。これからは、身近なところから喜びを見いだしていかれるでしょう。そうすれば、人生の中の一つのストップが、いかに自分の精神を育ててくれるための大きな愛だったかを知り、大きな自然の中で「生かされている自分」であることに目覚めていかれるのではないでしょうか。
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